チャタテムシ、その生態に迫ります。
目次
- 基本情報
- 細かい情報
- 大量発生を防ぐ予防的対策
- さらに細かい情報~防除を困難にしている理由~
- オスとメスの逆転~トリカヘチャタテ~
- ギャラリー
名前(和名/学名/英名)、分類、大きさ、色、生息地、好物
チャタテムシ/Psocoptera/Book lice
昆虫網チャタテムシ目に分類されている、体長数ミリの不完全変態昆虫。
不完全変態であるため、幼虫は成虫とほとんど同じ見た目をしている。
色は、黄色、褐色、黒色、赤色など種によって異なる。
世界中で数千種が確認されており、木の幹、落ち葉、岩、鳥の巣、洞窟、人家などあらゆるところに生息している。
湿気を好み、カビを食べる。
米や小麦粉、乾麺といった一般的な貯蔵食品、虫の脱皮殻・卵、標本も食べる。
Q.名前の由来は?
チャタテムシの鳴らす音が、お茶をたてるときの音に似ていることから「茶立て虫」と呼ばれた。
Q.飛べる?
屋内で見られるものは翅をもたない。屋外のものは飛べるものも。
Q.どうやって繁殖する?
一度に1個の卵を産む。
屋内で見られるものは、1日1~2個、一生に100~200個の卵を産み、孵化までに9~13日、成虫になるまでに9~13日かかる。
Q.どうやって家の中に入る?
段ボールに入っていたり、窓の桟の隙間から侵入する。
Q.人体への影響はある?
死骸がアレルゲンになることがある。
また、チャタテムシを餌にするツメダニが発生する。ツメダニは血を吸うダニではないが、チャタテムシや他の餌となるダニと勘違いして人間の皮膚を刺し、体液を吸う。刺されると、かゆみを伴う虫刺されの原因になる。
・湿気を絶ち、カビを防ぐ。(例)部屋干ししない、換気、除湿、乾燥剤
・屋内に段ボールを放置しない。段ボールの隙間にチャタテムシがいるため、放置していると出てきて増殖する。
1.繁殖ペースが早く、卵には殺虫剤も燻蒸剤も効果がない
・上述の通り、成虫は毎日産卵するので、毎日孵化して成虫の数も日に日に増えていき、1日あたりに産まれる卵の数も増える。
・幼虫・成虫には殺虫剤の散布や燻蒸剤(1)による処理が有効であるが、卵の中の個体は死なずに無事孵化する。
・また、チャタテムシは光の当たらない所へ卵を産む習性があるため、物理的な除去も難しい。
(1)燻蒸剤
通常の殺虫剤は液体だが、燻蒸剤は気体の殺虫剤である。
2.既存の有名な方法が使えない
・動物の分泌するフェロモン(2)によって、オス(またはメス)を誘導し、互いを近寄れなくすることで、繁殖を防ぐ方法がある。
・また、不妊のメスを放つことで、交尾を行っても産卵できないようにする方法もある。
・しかし、チャタテムシには単為生殖(3)をする種があり、先に述べたような2つの方法による防除は難しいと考えられる。
(2)フェロモン
同種の個体に対して特定の行動を誘導する化学物質。動物の体内で生成され、体外に分泌される。
(3)単為生殖
一方の性のみで子孫を残すこと。単為生殖できるのは、屋内で見る1~2mmの翅をもたないヒラタチャタテ。
3.発生源が特定できないほど家中に広がる
・繁殖が進むと家中に広がり、至る所で見られるようになる。
・そのため、発生源を特定し抑えるのは難しい。それだけ環境に順応する力が強いといえる。
たいていの動物ではペニスはオスにあるものだが、ブラジルの洞窟に生息しているチャタテムシの仲間トリカヘチャタテは、メスにペニスがついている。交尾は、40~70時間かけて行われる。メスがオスに挿入し、メスはオスから精子と栄養の入ったカプセルを挿入部分の管から受け取る。また、メスの挿入器の根本には、交尾の間オスを捕まえておくためのトゲが生えている。
栄養カプセルをオスが渡すことは、オスの交尾時のコストを増やし、再交尾はオスよりメスのほうが早くできるようになった。交尾への積極性も通常の生物と逆転し、メスへの強い性選択がかかり、交尾器構造の逆転が起こった。
詳しくは、以下のサイトへ。
https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20170919_02/
https://costep.open-ed.hokudai.ac.jp/like_hokudai/article/7661
https://www.hokudai.ac.jp/news/140418_pr_agr.pdf